需要と供給。
需要と供給の単元が好きだったのよね。
社会科?
吉原で三味線を教えている高杉と、習いに行っている少女月詠。筋はいいが無愛想で可愛らしさが足りねェなと思いながらも、まぁ色々あって最後身請する的な妄想へ逃げていますよ。
月詠は高杉をロリコンめ、と思っているし、高杉もどうこうする気はない。筈だったのにー。とかいいじゃないですか!
まぁ、身請じゃないけど。
ちゃんとなんでこうなったかという話もあるけど先に厨二を終わらせたい。
↓
。
「珍しいじゃねェか。おまえが三味線ひくなんて」
「覚えておるものじゃな」
「なかなかいい音だ」
「師匠がよかったからの」
「そうだろうよ。だが、おまえは筋はよかったが気持ちが音に乗りすぎだった」
「もうその話はやめろ」
うんざりした顔に合わせて音が途端に曇る。
「ほら、ちょっと貸してみろ」
それこそ当時うんざりするほど教えた旋律を奏でると、俺の音に合わせて手首を返す。小さくひらひらと動く月詠の手の先は真っ白い蝶のようだ。
「踊りの方が得意だったか?」
「どちらも嫌いじゃった」
後悔しているか?などと聞くつもりはない。
月詠を大事にしてくれた姐様や、せっかくできた友を捨ててまでついて来させたのだから。
俺も全てを擲った。
家も金も地位も身分も。
おかげで恵まれた暮らしを送っていた俺にとっては酷い生活が続いたが、不思議と以前の暮らしを惜しいと思うことも、辛いと感じることもなかった。どうしてかと聞かれても、ふたりでいられたから、なんて月並みな理由しか思い浮かばないが、それ以外俺たちには何もない。
俺が三味線を教えている頃は愛想のないただのガキだったのになァ。なんでこんなことになっちまったんだか。
少しだけ昔の事を思い出している間に、傷だらけの蝶が気紛れに飛び立ってしまわないよう、小さく舞い続ける細く白い手首を取り、畳へと縫い付けた。